2005年に登場したmicroSDメモリーカードは、モバイルデバイスメーカーの製造コストを削減し、幅広い価格帯で最新型の携帯電話を提供することで売上増加に寄与し、販売戦略を支援してまいりました。microSDメモリーカードはSDアソシエーション(SDA)の仕様、規格に基づくことで、ユーザーは、使いやすさをそのままに、機能と容量を拡張し続けることで、ホスト機器の新しい革新的な設計を促進しています。
また、この求めやすい製品価格と機能拡張の両立という、技術的に難しい課題を成し遂げたこの小さなメモリーカードは、ユーザーと様々な業種のメーカーに大きな価値を提供しています。
ユーザーニーズへの対応
microSDメモリーカードでは現在1GBから200GBまでの容量タイプがあり、ユーザーは必要に応じたストレージ容量へ容易にアップグレードすることができます。また、SDAメンバーはユーザーに対して、microSDメモリーカードが一定の性能を維持するようSDコンプライアンス試験を実施しています。
現代のモバイルデバイスユーザーにとって、セルフィー、料理フォトなど、ストレージ容量を多く必要とする動画を絶えず撮影できることは重要な条件であり、またFacebook、インスタグラム、スナップチャットなどの新しいソーシャルメディア市場にも必須の性能といえます。しかしこれらはSDメモリーカードがなくては容易に実現できることではありません。SDAは、こうしたニーズを満たすため、必要なストレージ容量と最低限の動画録画性能をユーザーに保証する容量増加やスピードクラスなどの規格を策定し、ユーザーのニーズに敏感に対応してまいりました。SDメモリーカードはこうした多岐にわたる絶え間ない性能改善とアップグレードによって、急速に発展している「モノのインターネット(IoT)」などの新しい市場にも導入されてきています。
技術革新の牽引役
モバイルデバイスメーカーは、高機能な自社の新製品の開発と同じペースでSDメモリーカードのストレージや処理速度が確実に向上する事を分かっています。だからこそ、妥協することなく設計や開発において新たな挑戦を行うことができるのです。
メーカーの増大するストレージニーズに対応するために、SDAはmicroSDカード、microSDHCカード、microSDXCカードの規格を定めました。また携帯電話とメモリーカードの大容量データの処理速度を向上させるため、UHSスピードクラスを開発しました。microSDにはsmart microSDメモリーカードと言われるNFC(近距離無線通信)やセキュアエレメントなどの追加機能を組み込むことで、さらにモバイルデバイスを有効に活用することができます。SDAは今後も弛まない技術革新を行うことで、モバイルデバイスメーカーに常に最新の機能を提供してまいります。そして世界のモバイルデバイスメーカーの販売促進に貢献するために、今後もこの小型化、多機能化という戦略を最上位の課題とし、さらにmicroSDメモリーカードの新しい活用方針を年内にも発表してまいります。
注目すべきメリット
モバイルデバイスメーカーは長年、製品コストを削減し、モバイルデバイスの販売量を増加させるための努力を、microSDメモリーカードに頼ってきました。ユーザーがストレージ容量のニーズに合わせたカードに変え、簡単にアップグレードができるという商品価値の向上はモバイルデバイスの費用削減につながるなど、数多くのモバイルデバイスで現在も効果的です。microSDメモリーカードを利用することで、世界中のどこででも最先端の機能をもったリーズナブルなモバイルフォンを利用することを可能にしているのです。
時にメーカーは、将来のデバイス取替を強力に推し進める事で現在の利益を押し上げるという、閉鎖的な商品戦略を試すことがあります。モバイルデバイス等に高価な追加ストレージを組み込みユーザー自身でのストレージ拡張オプションを与えないことで、小売価格を上げ、販売利益を上げるのです。その結果、残念なことにユーザーは手頃な価格で製品を購入することができなくなり、microSDメモリーカードが提供できたであろう容量追加ストレージに対してより高い費用を払うことになります。そしてもしストレージがさらに必要になった場合でも、単にmicroSDメモリーカードを取り替えてメモリーを拡張するのではなく、モバイルデバイス自体を交換するしか選択肢がないのです。その結果ユーザーは複数の電話の購入を迫られたり、電子機器廃棄物も増えたりすることになるのです。
中には、microSDスロットがないものや、SD機能をすべて使用できないハイエンドモバイルデバイスを販売したとしても望む結果を達成できないことに気づき、この閉鎖的な商品戦略を再考しているメーカーもあります。ユーザーの声に耳を傾け、microSDメモリーカードのメリットを認識したメーカーは、ユーザーのSDに関する要求を満たす方向でデバイスをアップグレードしました。以下ご参照ください。
- -HTCは2013年3月にmicroSD非対応のHTC Oneを発表しましたが、2014年3月、microSD対応のHTC One (M8)を発表しました。
- -LGは2013年9月にmicroSD非対応のG2を発表しましたが、2014年6月までに、microSD対応のLG G3を発表しています。
- -2014年、Android KitKat OSアップデート時に、ユーザー自身で組み込むmicroSDメモリーカードの利用方法に制限がかけられました。使い勝手が悪くなったのです。しかしユーザーからのこうした新しい制限に対する苦情を受け、Androidチームは、Android LollipopとAndroid OneでmicroSDメモリーカードを大幅に活用できるようにアップデートを行い、実質的にはmicroSDメモリーカードの採用を義務付けるようになりました。
- -新しいWindows Phoneにおいて、ユーザーはmicroSDメモリーカードを標準ストレージとして利用することを可能にし、カードからプログラムを直接実行できるようになりました。
通信事業者の提供サービスにおけるデータ容量の変更、特に無制限データプランの廃止により、ユーザーはますます携帯電話に関してmicroSDメモリーカードに対する依存性を高めるという傾向にあります。その結果、ユーザーはmicroSDメモリーカードに目を向け、更にSDカードにデータを保存して、通信事業者によるデータ課金を節約しようとするでしょう。クラウドは大量のデータダウンロードを必要とするため、こうした変化はクラウドのストレージオプションとしての使用にも制約をかけています。またクラウドは物理的な位置条件/接続性にも制限があるため、いつでも使用できるわけではなく、ユーザーが求めるデータセキュリティにも欠けています。このような理由により、多くのクラウドアプリケーションは、大容量のローカルストレージを必要とするキャッシュやインテリジェントな同期機能を採用する結果となっています。
性能への高い信頼性
SDアソシエーションは、SDメモリーカードとSDデバイス間での確実で安定した性能と相互的な互換性を確保するために、常にSD規格を更新しており、SDアソシエーションメンバーだけが、すべてのSD規格に対する完全なアクセスとライセンスを所有しています。メンバーは自社製品がSD規格に適合していることを確認するための準拠・試験ツールを使用することで、各自のデバイスの安定性と相互的な互換性を確保しており、このような努力によって、SDカードはユーザーに強く支持されるようになりました。
例えば、デザイナーバッグや電化製品などで模造品が多いのは、製品が成功を収めておりユーザーの需要が大きいことの表れともいえるのですが、SDメモリーカードの場合、模造品は中国で見つかることが多く、オンラインストアで販売者が大量にまとめて販売したり、包装なしで販売するなどといった形で多く見つかります。最近EETimes と The Counterfeit Report の両メディアがこのストレージ業界全体の問題を検証し、純正カードであることをユーザーが確認できる方法を公開しています。模造品のSDメモリーカードとはSD規格に適合しておらず、SDA準拠試験に合格していないものを指します。これらのカードを使用した場合、動作上の問題や表示より実際のメモリーが少ないなどの不具合が報告されています。最近、価格だけを見て購入しているユーザーに多く確認されている「SDカード模造品」問題はこのようなカードが原因なのです。
SDAメンバーとSD-3C LLCは、中国政府担当者と協力して模造品SDメモリーカードの出荷を摘発し、その拡散を阻止しています。SD-3C LLCはSDメモリーカードとSDホスト/付属品に必要な知的所有権を許諾し、 遵守徹底 を促進する団体で、2012年以降では、100万個を超える模造SDメモリーカードを摘発、破棄され、グローバル市場での流通を防止しています。またインターネット上での模造カードの販売広告をウェブリサーチによって検索し、販売の中止へ追い込んでいます。中国政府は長年あらゆる種類の模造品対策を行っており、中国の優良ブランド保護委員会が開催する中国の知的所有権環境の改善のためのシンポジウムにはSD-3C LLC代表者も参加しています。上記以外にも、SDAメンバーは、小売セキュリティ機能の追加、法的措置、厳格な流通管理により、積極的に模造品削減に努めています。
純正SDメモリーカードを購入するにあたっての最適な情報源は、SD-3C LLCのウェブサイトになります。ここでは純正SDメモリーカードとホスト製品を製造販売する認定企業のリストが掲載されています。このほか模造品製造者は有名なカードメーカーブランドを模倣するため、認定企業のウェブサイト で正規販売店、流通者、再販売者のリストをご確認していただくことが重要です。またSDAとは関連がないサードパーティーでも、模造SDメモリーカードを検出するツールを提供しているところがあります。
ブライアン・クマガイはSDアソシエーション会長です。
©SD Association. All rights reserved. SD、SDHC、miniSDHC、microSDHC、SDXC、microSDXCのロゴはSD-3C LLCの登録商標です。