性能を下げずにサイズダウン
SDメモリカードは2001年に標準フルサイズで登場し、当初はMP3プレーヤーやカメラに使用されていました。フルサイズのカードが携帯電話には大きすぎたため、サンディスクはmicroSDフォームファクタを開発しました。当初はTransFlash™と呼ばれており、標準サイズのSD™メモリカードに対して約75%小さいものでした。2005年、サンディスクはこの技術をSDアソシエーションに提供しました。そしてmicroSDメモリカードと名前が変更され、最終仕様がリリースされたのです。
microSDメモリカードは、標準サイズのSDメモリカードと同様の用途向けに設計されていますが、より小さいフォームファクタのデバイスで使用できるように最適化しなければなりません。この難問を設計者は解決する必要がありました。メモリやコントローラなどの機能を変更せずにサイズダウンをするために、新しい製造方法を開発しなければならなかったのです。さらにmicroSDメモリカードは全体を覆ったケーシングを使用するには小さすぎるため、代替案を見つける必要がありました。この問題に対応するために、成型プラスチックを使用したハイブリッドパッケージを開発しました。
メモリに対する需要は高まる一方であったため、標準サイズSDカードと同じ、またはそれに近い容量を、より小さなフォームファクタに収める革新的な新方式を生み出す必要がありました。そのためにはメモリを多層にし、デバイスを小型化することが必要で、問題はさらに難しいものとなりました。しかし設計者たちは着実に開発を進め、その創意工夫はmicroSDメモリカードの完成として実を結んだのです。
一枚のカードでたくさんのアプリケーション
microSDメモリカードはコンパクトサイズなので、さまざまな市場の数多くのアプリケーションに最適です。GoPRO Hero®などのアクションカメラに採用されており、メモリ使用量が多く大容量のメモリを必要とする高速4K動画にも適しています。またカメラが搭載されているドローンにmicroSDメモリカードが採用されている場合もあります。さらにこれから発展するモノのインターネット(IoT)や、時計などのウェアラブルデバイス、監視カメラ、遠隔地のデータ収集をするデバイスなどにも理想的なソリューションとなりえます。ほとんどのIoTデバイスは小型であり、組み込みメモリよりもリムーバブルメモリが好まれる場合もあります。microSDメモリカードはこうした両方の問題を解決します。何よりもmicroSDメモリカードはメーカーと消費者の両者に対して、より高い柔軟性と自由度を提供することで、スマートフォン市場の発展を支援してきました。
またmicroSDメモリカードはフォームファクタが非常に小さく、リムーバブルメモリによってモバイルデバイスやその他の小型製品のメモリを柔軟に増設することができるため、発表以来、着実に総売上高を伸ばしています。
開発途上国で製造、販売されている低価格スマートフォンに対するmicroSDメモリカード市場が成長しています。メーカーはユーザーにとって求めやすい価格で販売するために、携帯電話の最も高価な部品であるメモリを削減し、ほとんどの機種にメモリカードを採用しています。容量の小さい内部メモリを搭載した製品を製造し、ユーザーが希望する容量のリムーバブルメモリを購入できるようにしているのです。通常、大容量の内部メモリを搭載した機種を購入するよりも、カードを別途購入するほうが安くなり、長期的にみてユーザーは節約をすることができます。
携帯電話の次の展開
モバイルアプリケーションは、microSDメモリカード市場の成長に莫大な可能性をもたらしています。最近の市場での動きが、モバイルアプリケーションの影響を表しています。
Googleは最も成長が早く大きいモバイル製品セグメントである新興市場向けAndroid™ OneのOSと携帯電話にmicroSDメモリカードスロットを採用しました。またGoogleの次世代モバイルOSであるAndroid M、さらにWindows Mobileでは、microSDメモリカードによって、デバイスのプライマリストレージ容量を増加できるほか、microSDメモリカードから直接アプリケーションを実行することができるようにしています。
ハイエンドのスマートフォン市場では、ユーザーからの強い要求で、多くのハイエンドメーカーが製品をメモリカード対応にしています。今までストレージ拡張オプションをつけていなかったメーカーも、スマートフォンの設計を再びmicroSDメモリカード対応にするようにし始めました。こうした動きにユーザーは敏感に反応しており、microSDメモリカードはスマートフォン市場で再び存在感を増してきました。
低価格スマートフォン市場において、microSDメモリカードを搭載した中位機種とエントリーレベル機種のスマートフォン市場は伸び続けると とストラテジー・アナリティクスは予測しています。またリムーバブルメモリの代わりに組み込みメモリを採用する傾向にある高位機種は2015年から減少し始め、やがて中位機種(ほとんどがmicroSDメモリカードスロット搭載機種)が主流になると予測しています。携帯電話業界はさらなる費用削減に注力しているので、メーカーはメモリ仕様に関して中位機種のトレンドに追随する必要があると判断するかもしれません。このシフトは米国外で既に始まっており、インドでは中位機種が前年比43%増と、著しい伸びをみせています。
柔軟にメモリを増設する必要があるファブレットやタブレットにも、microSDメモリカードは最適です。例えば今年ベルリンで開催された業界の展示会IFA 2015では、数多くのスマートフォンとファブレットがmicroSDメモリカードスロット対応の設計を採用していました。デジタルトレンドによると スマートフォン&ファブレット新機種トップ10選 の全機種が例外なくmicroSDメモリカードスロットを搭載していま
独自規格団体の加護により
SDアソシエーション(SDA)はmicroSDメモリカードの規格を発行している規格団体で、市場からの要求と新しい市場出現に即して、新しい機能を常に追加しています。消費者向け製品の規格化のためには、「消費者中心」である必要があるため、SDAは重要な役割を担っています。SDAは独自に、次にあげる必要なものすべてを提供しています。
- 消費者向け製品の規格化に関する幅広い経験
- 市場のニーズと新しい機能を可能にする信頼できる仕様
- 規格仕様分類と関連ロゴの定義
- 下位互換性と互換運用性の維
- 詳細なテストガイドラインと互換運用検証セッションによる自主コンプライアンスの確立
- 市場における継続的な規格普及啓蒙活動
小さなカードの大きな未来
今年初めに発表されたストレージ容量の大幅な増加に加え、何よりも幅広く採用されていることが、SDカードの成功の大きさを最もよく表しているといえるでしょう。
microSDメモリカードがこの素晴らしい偉業を収められたのは、多くの業界のデバイスメーカーに対して、メモリ増設能力を提供したことが一因です。多くの場合において現在ユーザーは、カードを手ごろな値段で購入するだけで、希望どおりにメモリ容量を選択し、増設できます。また過去数年の間、メモリ消費量は格段に増加しました。これはビデオ録画をするユーザーが増えたことが主な原因です。
そして低価格スマートフォン市場、アクションカメラ市場、IoTアプリケーションが、microSDメモリカードを引き続き採用し、需要を支える見通しであるので、将来の展望も明るいものとなっています。技術進歩と市場拡大に関するあらゆる可能性を考慮すると、今後10年は必ずや素晴らしいものとなるでしょう。
ヨシ・ピントはSDアソシエーションの取締役会議長であり、サンディスク株式会社のCTO部門標準化担当ダイレクターです。
microSD、microSDXC、SDはSD-3C, LLCの商標です。AndroidはGoogleの商標です。GoPROおよびHeroはGoPRO, Incの商標または登録商標です。本記事に掲載されているその他のブランド名は識別目的のみに使用されるものであり、それぞれの所有者の商標である場合があります。
*本記事に掲載された見解は筆者のものであり、サンディスクの見解であるとは限りません。